嘴がピンクに

あひる日和

2011年06月06日 23:15


 星ちゃんはやっぱりアイデンテイファイし始めている。今日も、こんなことを言う。「男の子になりたかったから」と言う。彼女が時々、自分のことを”ボク”と言うので、「男の子のような口をきくの?」とたずねた私への返事だ。
とりあえず、ふんん、と返事。なにしろ、相手は子どもなので、深追いできない。彼女のカミングアウトにつきあうしかない。小二の女の子の学童保育まで引き受けている、アヒル場。この幼い女の子は、15羽の雛たちが目の前にいるからこそ、心を開いているのだろう。
 「今はお母さんの名前になっている」、そうだ。高校生のお姉さん、弟がいる。お母さんは、昼から仕事で、星ちゃんが寝た後で帰宅するとか。へ?じゃ、毎晩、男の人がお酒を飲みにくるというのは、離婚しているとはいえ、婚活中の”カタギの女性”ではなく、夜の商売をしているのかな?
「このハエ、オス?」と聞くが、すぐに、「図鑑で調べてみる」と答える。「そうそう、興味をもったら、自分で調べるのはいいよね、お利口だね」と、こちらが誉めると、目がきらりと輝く。心もち、胸も張っているように見えるのは、こちらの希望的観測か。
 手伝いも買って出る。水かけを頑張った。お握りをあげたら、「おいしいので、半分は後で食べる」とも、こちらが喜びそうなことも言える。
 自分がその年ごろって、どうだったのだろう。大人と、話したいとも思わないし、「オバアサンなの、オバサンなの?」と、質問し、目の前の大人が安心できる相手なのか、距離を測ったりする知恵、処世術のようなものは無い、まったくの無邪気だったに違いない。
 感受性に恵まれすぎても、幸せになれないよ、心の中で思う。彼女が如才なくふるまえる女の子としての資質を持っているのか、興味あるなぁ。
 二人が、アヒル小屋の中にいて、見物人がくると、「こんにちわ」と、ガイド役を頑張る。ふと、見ると、お尻の羽が白くなり始めた雛たち、なんだか、嘴もクリアなピンク色。
「嘴が長くなっている」と、星ちゃんも気づいているようだ。成長する女の子、アヒル、いいねぇ。



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